こんにちは!泉ひかりです。
ここ2.3年パルクールの大会が世界中で多く開催されるようになり、日本での開催やメディアで取り上げられることが多くなってきましたね。パルクールの認知度はあがり、どういったものか説明することは少なくなりましたが、大会と言われるとどうやって行われているかは検討もつかない人が多いのではないでしょうか。私自身もここ1.2年でスウェーデンやシンガポール、オーストラリアなど、いろんな地域で開催される大会に参戦して初めて、ルールや仕組みがわかってきました。
今回は、パルクールの大会の種類やルール、有名な大会などをざっくり紹介していきたいと思います。
目次
パルクールの大会は主に3つの種目がある
フリースタイル
世界中で一番よく開催される大会がフリースタイルの大会です。指定された範囲内で、時間内・もしくは時間無制限に自由に動いてジャッジされます。フィギュアスケートや体操競技のゆかの種目みたいなイメージです。ただ、明確な審査基準はなく、審査員の知識と経験で判断されるため、大会ごとに特色は変わってきますが、大体どの大会も下記の4つのカテゴリで審査され、総合得点で競います。
正確性(Execution)
ランのなかで行われた技やテクニックの一つ一つが安全にできているか、正確に行われているかなど、完成度を審査されます。
流動性(Flow)
一つ一つの技やテクニックをしっかり繋げ、一連の動きになっているかを審査されます。技と技の間の無駄な体の振りやステップ、ただ走っているだけだと減点になります。大技の前に止まったり、着地で流れが止まったりする場合も減点されますが、審査員によって止まったと判断する基準は様々です。
難易度(Difficulty)
一つ一つの技やテクニックの難易度、また一連の動きの難易度を審査します。これは単純に難しいアクロバットを入れれば点数が上がるというものではなく、どの技をどの場所で、どういうタイミングで行ったかも含めて判断されます。
例えばただのランニングプレシジョンでも、助走距離や跳躍距離に、踏切位置や着地位置が平面かレールか、高所か低所か、全く同じ条件でもランの一番初めにするのか終わりに入れるのか、など様々な要因で難易度が変わってきます。ここがフィギュアスケートや体操競技みたいに明確な審査基準や技ごとの得点を設定できない一番の理由であり、パルクールの大会の面白さであると思っています。
創造性(Creativity)
創造性に分類されるのは、自分で生み出したユニークな技だけではありません。みんなが思いつかないようなコース選択や、よく見る動きでもその障害物でやるの?!そういう使い方をするの?!という動きも創造性として評価されます。
スピードラン
スピードランはスタートからゴールまでのタイムを競う種目です。フリースタイルと違いルールや勝敗がわかりやすく、大会としては一番成り立ちやすいのではないかと思います。障害物競走やハードル走みたいな種目ですが、それらと違う点は障害物に対して越え方が自由なところです。コースのタイプを分類すると主に下記の3つに分けられます。
スタートとゴールのみ指定
地面に足がつかなかったら範囲内のどこを通っても良いタイプです。大きな大会ではあまり見られないですが、ローカルのパルクールジムが行っている大会でのスピードランでは、ジム内のレールエリアを使い、スタートとゴールのみ指定で、地面に足がついたら失格というルールで行われていました。参加者によってルートが全く違い、選択肢が無数に存在するため、見ごたえがある反面実力に関わらずコースの選択次第で順位が変わってきます。
チェックポイントを指定
スタートとゴールを指定し、たどり着くまでにチェックポイントを数カ所設けるタイプです。カナダで行われた北米大会NAPC2019ではコースの中に旗を用意し、赤色のフラグはフラグの左側を、黄色いフラグはフラグの右側を通過するというルール設けることである程度のルートを指定していました。その他にも、コースのに設けられたチェックポイントを順番にタッチする、もしくは好きな順番ですべてタッチしてからゴールまで向かうというルールで行われる大会もあります。チェックポイントがあるため、ある程度ルートの選択肢は絞られますが、その分どの選択が自分の実力的に最適で早く越せるかの比較がしやすくなります。
ルートと障害物を指定
障害物に対して越え方は自由であるものの、完全にコースと超えるべき障害物が指定されているタイプです。コースの選択肢はなく、障害物をどう超えるかも、2,3パターンあるかないかで、コースの条件が選手ごとに差がないため、オーソドックスなスポーツの大会の形式に近い反面、身長差によるハンデが顕著に現れるタイプです。わかりやすくいうと、例えば3mの壁がコースの途中にあったとして、高身長の人はあまり歩幅や歩数を考えなくても軽く壁をければ届く高さでも低身長だとそうはいきません。逆に、その壁の下の方にくぐり抜けれる狭い隙間も同時にあれば低身長に対するハンデもなくなるかもしれませんね。FIG Parkour World Cupがこの形式に当たります。
スキルチャレンジ
スキルチャレンジはとてもシンプルで、用意された課題の達成率で勝敗を決めます。スキルチャレンジはフリースタイル、スピードランに比べて、大きな大会では開催されにくい種目です。理由としては、パルクールの実践者や参加者にしか課題の難易度や面白さが伝わりにくくい、フリースタイルのように派手さもなければ、スピードランのようなスピード感がない点が大きいのではないかと思います。
ただ、フリースタイルでは、パルクール的テクニックよりアクロバットやダンスなど+a的要素が目立ちやすく評価されやすい部分はどうしてもありますし、スピードランはパルクールをしてなくても身体能力の高さでカバーできてしまう点を考えると、スキルチャレンジは一番パルクールのテクニックが求められるという点でパルクール純度の高い種目ではないかと思います。
指定された回数、または時間内に成功した課題の数を競うタイプ
一番よく行われる形式です。NAPC2019では、30分以内に提示された9個の課題のクリア数を競うものや、10分以内かつ5回の挑戦で提示された3個の課題のクリア数を競い、順位を決めるものがありました。基本的にはできるかできないかのギリギリを狙った課題が出されるので、どの課題から挑戦するか、どの課題に時間や限られた挑戦回数を割くかが勝負の分かれ目となります。
1課題ごとに難易度設定があり、難易度ごとに得点を得れるタイプ
こちらは、提示された複数の課題の中で、難易度が分かれているタイプです。基本的には時間設定はなく、難易度も優しいものからアホみたいに難しいものまで幅広く設定されてるので、純粋な実力が測られます。オーストラリア大会JUMP OFF2019で行われたスキルチャレンジがこのタイプに当たります。
複数課題があり、1課題ごとに3回挑戦でき、成功した中で一番難易度が高いものが得点として反映されます。例えば、実際に行われたラシェの課題では、指定された着地位置が一番近いものが1点、少し距離が離れ高くなっている場所だと2点、2つ目と同じ場所だが極端に着地位置が高い場所だと3点、という風に難易度ごとに点数が決められていました。なので、3回の挑戦の中で1個づつ難易度を上げて挑戦する人もいれば、いきなり3点を狙って挑戦する人もいました。
参加者が順番に課題を指定し、失敗した人から脱落、もしくは成功した課題の数を競うタイプ
参加者の一人が順番に課題となる動きを成功して見せ、他の参加者が挑戦して失敗した人から脱落、もしくは成功した課題の数を競います。出題者になる人が自分の課題を失敗した場合は、他の参加者が挑戦することなく出題権が次の人に移ることが多いです。このタイプは種目というよりは、大会ではないパルクールのイベントや、フリースタイルやスピードランの間に誰でも参加できるゲームとして開催されることが多いです。
スキルチャレンジの面白さや性質、実際の大会の解説などが書かれている、イドウジュツ1.0のコラム「パルクールコラム:スキルコンペをやろう」がとても面白いので、更に詳しく知りたい人はチェックしてみてください!
どうすれば大会に参加できる?
では、大会に参加するにはどうすればいいのでしょうか。
主な参加方法は4つあります。
動画選考
1分ないし1分半などの決められた長さ以内の動画を製作し申し込む。動画の内容には細かい指定があり、室内での撮影や、マット、動かせるセットで撮影されたものは無効などのルールがあります。
現地予選
大会が行われる前に、現地で予選を行うタイプです。事前申し込みが必要なタイプと、直接行くだけのものがあります。
予選なし
申し込めば誰でも出場することがでるので、あとは現地直接行くだけで出場できます。
招待選手
大会によっては昨年の成績優秀者や、他の大会での優勝者など、招待されて参加する人たちの枠がある場合があります。
世界各地で大きな大会が増えてきた!
私がパルクールを始めた7年前、世界中からトレーサーが集まるパルクールの大会と言えばRedBullの主催するArt of Motionしかありませんでした。しかし、ここ数年でパルクール人口や、レベルが格段にアップし、大会に参加したり世界中を飛び回るトレーサーも増えたことから世界各地での開催されていた大会がより国際的になったように感じます。近年盛り上がっている国際大会を、いくつか紹介していきます。(カッコ内開催国)
世界大会
RedBull Art of Motion (ギリシャ・イタリアなど)
レッドブル主催のArt of Motion。一番最初の大会はなんと2007年でした。2011年には、日本、ブラジル、アメリカなど、1年で計5回も開催されました。2012年からギリシャ・サントリーニシリーズが始まり、このころから年に一度の国際大会という地位を確立。この大会優勝して爆発的に知名度が上がったり、Redbullアスリートになる選手もいます。5年間続いたサントリーニシリーズも2017年で終了し、新しい開催場所に向けて去年は準備のため見送り、今年2019年はイタリアでの開催が発表されました!パルクール好きなら一度は現地で見たいこの大会は10月に開催されます。最新情報はこちらから
https://www.redbull.com/jp-ja/tags/parkour
The AirWipp Challenge (スウェーデン)
The AirWipp Challenge(通称:AWC)は2012年より7年間続いたスウェーデンで開催されていました。AWCはヨーロッパの有力選手を中心に、アジア・オセアニア地域からも選手が集まる大会です。2016年からは日本の選手も毎年出場しました。
FIG Parkour World Cup(日本・中国・フランス)
FIG Parkour World Cupは国際体操連盟が主催するパルクールの大会です。競技パルクールのオリンピック追加を目標として、体操競技の新競技として開催されています。2018年よりワールドカップシリーズがスタートし、中国・日本・モンペリエの3大会が一年にシリーズとして開催されています。2020年には日本の広島県で初の世界選手権が開催されます。
海外大会
North America Championship (カナダ)
カナダ・バンクーバーのジム「Origins Parkour」で2012年から開催されています。大規模な大会では珍しい、スキル、スピード、スタイルの3カテゴリすべてを行っています。2015年には日本人選手として島田善さんがスタイル部門で優勝しました。
JUMP OFF (オーストラリア)
AAPESとういうシドニーのジムで行われている大会です。大会は、男女ではなくプロとアマチュアで別れているので、基本的には男女混合です。
Asian Championship (シンガポール)
Asian Championshipはシンガポールで開催されるアジア圏の大会です。2018年には数多くの日本人が出場し、女子に関してはTOP3を独占しました。
日本国内大会
パルクール祭(愛知県)
通称「パル祭」2017年から開催され、去年は100人を超える参加者が集まりました。大会自体はとてもカジュアルで、全国から実践者が集まって楽しむお祭りのようななイベントになっています。
忍者パルクール(石川県)
2018年から金沢で始まった日本パルクール協会主催の大会です。忍者スピードラン、忍者フリースタイルに分かれています。忍者スピードランでは、当日発表される男女混合チームで競い合うという新しいスタイルの競技も行われています。
以上、パルクールの大会の種類やルール、有名な大会などの紹介でした。
私自身、上記で書いた海外での大会はほぼ全て参加していますが、他の競技と違いパルクールの大会は参加者同士がとても和気あいあいとしていることです。大会前といえど、楽しむところは全力で楽しみ、試合前練習では参加者同士がお互いにアドバイスし合うこともよくあります。これから先、各地で大会が開かれ、大会に出る、優勝するのを目標に練習をする人達も増えていくかもしれません。その中でも、今のパルクールの大会やコミュニティの雰囲気を維持したまま、レベルが上っていく未来が楽しみです。